イタリアンレザーの「イタリア」は、どこにある?
更新日:3 日前
こんにちは。開発部よりDim. Journal、第2回をお届けします。
今回は、革製品そのものではなく、その材料である「革がどこから来たのか」という話です。
革製品の商品説明で、イタリアンレザーという言葉を目にすることはよくありますよね。
では、それはイタリアで育った牛の革なのでしょうか。
実際には、必ずしもそうではありません。
一枚の革が製品になるまでには、原皮が生まれる場所があり、それを革へ変えるタンナーがあり、さらに、その革を選んで製品にする作り手がいます。
その流れを少し辿ってみると、「イタリアンレザー」という言葉だけでは見えなかったものが見えてきます。
01|「イタリアンレザー」は、何を意味している?
革産業の認証機関ICECが採用する基準では、完成革をイタリア産とする場合、再鞣し、染色、加脂といった革の性質を決める主要な工程がイタリアで行われていることが基準になります。
原皮そのものがイタリア産であることは条件ではありません。
革という素材を考えると、この区別には意味があります。
同じ牛革でも、鞣しや染色、加脂、表面の仕上げによって、張りや柔らかさ、色や艶、手触り、使い込んだ後の変化はかなり違います。
原皮をどのような革にするかは、タンナーの仕事によって大きく決まります。
たとえば、Dim.で使用しているConceria 800のTOSCANO Liscioは、フランス、ノルウェー、スイス、デンマーク産の牛ショルダーを、イタリアで植物タンニン鞣しした革です。
自然な銀面を残したLiscioと、表面にバフ加工を加えたBuffedでは、同じシリーズでも見え方や触感が変わります。
他にも、TEMPESTIのSIBILLA Liscioは、スムースな表面に白いワックスを施し、使うにつれてその下の色や艶が現れてくる革です。
TEMPESTIでは、食肉供給網から生じた欧州の原皮を使用していることも公表しています。
M.P.G.のINGRASSATOは、張りのある植物タンニン鞣し革で、油脂によって色と艶が深まっていきます。
M.P.G.が使用する原皮はフランスの農場から調達されています。
つまり、Dim.で扱うイタリアンレザーだけを見ても、原皮はフランスや北欧などからイタリアへ渡り、そこで初めて現在の革としての性質を与えられています。
と言っても私たちDim.は、単にどこの国の原皮か、イタリアンレザーか、といった「カテゴリー」で革を決めているわけではありません。
イタリアだけでなく日本の革や他国の革も取り寄せて、かなり多くの種類の革を実際に見て触れた上で、製品にどれを使用するかを決めています。
イタリアンレザーは、一つの品質や風合いを表す名前ではありません。
その革について知ろうとするなら、イタリアという産地名の内側にあるタンナーや革の種類まで見た方が、実際の違いが分かります。

02|その革は、どこから来たのか
タンナーよりさらに上流へ遡ると、今度は原皮となった牛がどこで育ったのか、という話になります。
この原皮の出所をめぐって、近年EUで議論になったのがEUDR(EU森林破壊防止規則)です。
簡単に言えば、森林を切り開いて作られた農地や牧草地に由来する商品をEU市場へ入れないための仕組みです。
対象となる事業者には、生産地や合法性、森林破壊との関係を調べて問題がないか確認する「デューデリジェンス」が求められます。
牛も対象となる品目の一つで、原皮や革も当初はその範囲に含まれていました。
革をEU市場へ流通させる際にも、その牛がどこで育ったのかまで遡れる情報を求める考え方です。
ところが2026年7月、欧州委員会は原皮・皮革を対象から外す委任法令を採択しました。
その背景を考えるうえで興味深いのが、牛一頭の経済価値のうち、原皮がどの程度を占めるのかという数字です。
2026年にUNIDOが公表した革の環境フットプリント評価ガイドラインでは、一次データを取得できない場合に用いる原皮への世界平均の経済配分を1.5%としています。
一方、同年の査読研究では、地域ごとの原皮価格などを反映した世界加重平均を約8.1%と推計しています。
計算方法によってかなり幅はありますが、原皮には経済価値がありながら牛一頭の価値の中心ではないことは共通しています。
仮に高い方の8.1%を採用しても、屠畜時の牛の経済価値の9割以上は原皮以外です。
原皮から得られる収益を失うために、食肉を中心とした残りの価値まで手放し、牛の飼育そのものを大幅に減らすとは考えにくいでしょう。
革だけを規制した場合、牛の生産そのものが減るより先に、追跡にかかる費用に見合わない原皮がEU以外へ流れたり、価格によっては革として利用されなくなったりする可能性があります。
また、原皮や革は対象でも、バッグや靴など多くの完成品は対象外だったため、EUに入る前に対象外の完成品にまで加工されると、原皮まで遡るデューデリジェンスを経ずにEU市場へ入れるという制度上の穴もありました。
原皮の出所を追えることには意味がありますが、それを理由に革をEUDRの対象とすることが適切かは、もう少し別の観点も踏まえて考える必要があります。
皮革特有の流通や、牛一頭に占める原皮の位置づけを考えると、今回の除外にも納得できます。
さて、EUDR自体はEUの規則ですが、もし革が規制対象のままであれば、その影響はEUの中だけでは完結しなかったでしょう。
イタリアのタンナーが対応するコストや扱える原皮の範囲が変われば、日本に入ってくる革の価格や供給にも波及する可能性があります。
イタリアンレザーやそれを使った製品を使う側にとっても、それほど遠い話ではありません。
03|タンナー名まで分かると、何が見える?

商品の売り文句にある、「高品質なイタリアンレザー」という説明だけでは、その評価の根拠までは分かりません。
タンナーや革の名前が明らかなら、原皮の産地や鞣し・仕上げの方法に加えて、原皮のトレーサビリティ、排水や薬品の管理、取得している認証など、ブランドの商品説明とは別の情報まで辿れることがあります。
ブランド側がその革を選んだ理由も一つの判断材料です。
革そのものの性質と、それを製品の形や使い方にどう結びつけるのかは、また別の要素。
ブランドやメーカー側のセンスや技術、こだわりが見えるところになります。
詳しい情報があること自体が品質を保証するわけではありませんが、「良い革」という評価だけを受け取るのと、その根拠を自分でも確認できるのでは、製品を見るための材料が違います。
人は、何かを選ぶときに「お墨付き」や「太鼓判」を手がかりにしがちです。
自分で情報を集め、比べ、感性で見た目の良し悪しを見極め、手触りを感じ、判断することには、思っている以上に手間や負荷がかかるからです。
「○○デザイン賞受賞」や「著名人も愛用」といった言葉が選ぶ理由になるのも、不自然なことではありません。
だから、「高品質なイタリアンレザーを使用しています」という説明も、それだけでは革の品質や背景まで分かるわけではありません。
評価そのものと、その評価を支える情報は別ものです。
これは革製品に限った話ではなく、何かを買うときに、肩書きや評判をそのまま答えとして受け取るのではなく、「それは何を根拠に言われているのか」を一度見てみるだけでも、選び方は少し変わるのではないでしょうか。
04|革の未来と持続可能性
革製品の未来は、持続可能性にかかっています。
環境への配慮が高まる中、革の生産方法も変わってきています。
エコフレンドリーな方法で鞣された革や、リサイクル素材を使用した製品が増えています。
これにより、環境への負担を軽減しつつ、質の高い製品を提供することが可能になっています。
私たちDim.も、持続可能な革の調達に努めています。
革の選定においては、環境に優しいタンニングプロセスを採用したタンナーを選ぶことが重要です。
これにより、革製品が持つ美しさと機能性を保ちながら、環境への影響を最小限に抑えることができます。
持続可能な革製品は、ただのトレンドではありません。
これからの時代に必要な選択肢です。
私たちの選ぶ革が、未来の地球にどのような影響を与えるのかを考えることが重要です。
05|おわりに
革製品の選び方には、さまざまな視点があります。
その中でも、原皮の出所やタンナーの選定は非常に重要です。
革の品質や背景を理解することで、より良い選択ができるようになります。
Dim.は、芸術性と実用性を兼ね備えた「ニュー・アブノーマル」なレザーアイテムを通じて、人々の暮らしに新しい価値と体験を提供し、ユニークなデザインと機能性を求める層に選ばれるブランドになることを目指しています。
私たちの商品を通じて、革の魅力を再発見していただければ幸いです。
以上、Dim. Journalでした。


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